最近、ミームの本を読んでいる。
やはりミームは面白い。
Web2.0も、僕にはそういう切り口から見たほうが腑に落ちる。
自分の立ち位置はここが一番しっくりくるように思う。
「ミーム」に興味を持ち始めたのは4年前。
最近この本をよんで思いついたことをまとめておこうと思う。
ミームは心の遺伝子である。
と言われる。
20年ほど前に、
いち早くその存在に気づいたリチャードドーキンスはさすがと言うほかないが、
このジーンとミームにはとても共通点が多い。
もっとも大きな共通点は、
どちらも自分自身をコピーして増殖することを目的としている
という点だ。
ジーン(DNA)は実体のある物質が、化学的な性質を利用して増殖している。
その複雑で精緻な機構は、本当に美しい。
一方ミームは、(物質的には)実体のない「概念」が
コミュニケーションを通して複製されて、増殖していく。
で、最近 考えたこと。
ミームが、ジーンを脅かしつつあるのではないかということ。
ミームのことをいろいろと考えていた時に、
ふと浮かんだのが「パラサイトイブ」だった。
パラサイトイブは、これまで「細胞」を宿主として、
細胞と共生してきたミトコンドリアが、自立して細胞(生物)を脅かす存在になるというもの。
これと同じことがミームとジーンの関係にも言えるのではないか。
まず、ミームがジーンを宿主として生きてきたということは
素直に考えられると思う。
「ミーム」の本にも書いてあったように、
ジーンが残りやすくなるようなミームは、強い
(男性の不貞を禁じる、近親相姦の禁止といったようなミーム)。
ジーンはミームを利用して
(ミームが発生したのはいつか、というのは今回は置いておく)、
増殖を効率よく、強固にしてきたのだと思う。
「細胞」が「ミトコンドリア」のエネルギー発生回路を利用して
発展してきているのと同様だ。
そうやって、すくなくとも人類の中にあるジーンとミームはこれまで発展してきた。
が、ここである変化が起きた。
「文字」が発明されたことだ。
「ミーム」の実体は、解釈によってさまざまだが、
「ある考えがコピーされることにより増殖する」という見方をとれば、
文書として、本として残るということはミームにとって増殖を意味するように思う。
ミームは脳の中にあるものだけ、という観点からしても、
メディア(媒介)として本を使うことにより、
ミームはそれまでと比べ物にならない早さで増殖することができるといえる。
つまり情報媒体は、ミームの増殖とある程度 比例関係にあると思うのだ。
情報技術は、そのようにして進化を続けた。
今のIT革命も、
やはりコミュニケーションの部分が特化して発展している
(それ以外のものを求めているからこそ余計にそう映ってしまっているのかもしれない)。
そうして、ミームはコンピューター、ネットという
理想的な増殖の環境を手に入れたのだ。
少し脱線するが、僕は人のコミュニケーションは
コンピューターでいうところの「コピー」だということを考えていたことがある。
あるコンピューターから別のコンピューターへ、
フロッピーディスクをに書かれた情報を渡して、それをコピーする。
このフロッピーが、人間で言うと「声」なのだ、と思っていた
(フロッピーディスクが主流だった頃の話)。
この視点からコンピューターネットワークを考えてみると、
今のネットワーク社会はミームにとって、
より高速に増殖をすることが可能になった環境だといえると思う。
つまり脳から外に出て、
ジーンとの共生を捨てて、
ミームがコンピュータネットワークの中に自立したという風に思えるのだ。
が、ここで一つ壁が立ちはだかる。
それは、コンピューターのコピーはミスをしないということだ。
進化の要因の一つに突然変異は欠かせないが、
これって要はDNAのコピーミスによって起こるものだ。
人と人とのコミュニケーションの場合は、
逆にコピーミスばかり起きる。
ほぼ完璧に人の思想をコピーできるなんて、不可能だろう。
本や文章になれば、ある程度精度は増すが
書いた人の思っていることと文章がかけ離れているのは稀ではない。
それがコンピューターの中にのみ生きるミームにとっては、
自分の完璧なコピーを、非常に早く、リスクなく生産できてしまう。
これでは進化が止まってしまう。
どこをとっても同じ情報ばかり、
グローバリゼーションという現象の一側面なように思うのだが、
ミームの進化がここで止まってしまった。
だが、やはり進化は止まらないという性質を持っているのだろう。
ジーンにせよ、ミームにせよ
自己複製能力を持つものは総じて進化する特質を持っているのか、
また進化が始まろうとしている。
僕の考えでは、Web2.0は、
ミーム進化の新しい一側面だ。
この世界では、情報は一元化されていない。
世界中のネットにつながった人間の脳から、様々な情報が(ミームが)
次々にネットの世界の中に新たに飛び込んでくる。
ジーンの世界で言うところの、恐竜が発生する前の、
もっとも多様な生物種がいたという時代(たしかカンブリア紀)に近い時代が始まる気がする。
また、この世界では情報のコピーは完全ではない。
ブログのトラックバック機能なんて、
ミームの突然変異を引き起こすという観点からは
理想的な機能だと思う。
完璧ではないが、おおよその趣旨が近く、新たなミーム断片がこめられた情報。
理想的ではないか。
そのほかで言うと、
僕がWeb2.0で、最近先輩に教わって一番衝撃を受けたのは
フォークソノミーの概念だ。
一つの情報でも、見る人によってタグのつけ方は千差万別。
同じ情報が、多様性を持ち、違った形でコピーされていく。
これで1つのミーム(情報ファイル)が、
他のミーム(情報)と結合する機会が何倍にも高まった。
考えれば考えるほど、
これから始まる情報の時代が、ミームの意思によるものに思えてならない。
これはちょっとSFすぎるが、
以前にまじめにこんなことを考えた。
インターネットで
こうも簡単に性描写の情報(要はエロサイトのこと)が入手できるとなると、
日本の男はみんなだめになってしまうんではないか。
これはどこか日本を敵対視している国が、
日本人をダメにするためにエロサイトを普及させているのではないか、
と思っていたことがある。
が、最近思うのは、
これはミームがジーンに対して攻撃を仕掛けているというようにも考えられるのではないか。
確かにエロサイトのミームはものすごい強いものだ。
それがゆえに、人の性に対する欲求が、
バーチャルな世界で簡単に満たされるようになってしまうと
結果的にジーンからしたら打撃になるだろう。
現に人口増加率は先進国ほど低下しているし。
とすると、ミームがジーンを宿主として見限ったとも考えられはしないか。
ジーンによる(生殖による)脳というミームの住環境よりも、
コンピューターネットワークの中の、
非常に効率のよく、何百倍も早く増える住環境に
ミームは本格的に移行しようとしているのではないか。
SFすぎるかもしれないが、
DNAが見つかる前は、遺伝の理論も過激に聞こえただろう。
僕はこれが現実のある側面だと思っている。
それに即した新しい生き方、産業を模索している。
それにしても、こうやって考えをまとめてみると
瀬名英明さんが、「Brain Valley」の中で書いていたことが、
今になってよく分かる。
Web2.0の時代になってはじめて、4年前の記憶が理解できる。
その先見性には、リチャードドーキンスと同じくらいに感心する。